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NPO法人血管医学研究推進機構

「重度の肝硬変に対する肝臓再生治療のお話【リニューアル版】」について

AMF協力医師
久留米大学医学部内科学講座消化器内科
中村徹

はじめに

本邦におけるC型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus; 以下、HCVと記載します)は、主として輸血や血液製剤にて感染したという歴史があります。現在、HCVキャリアは全世界で約1.7億人、本邦で約150万人存在すると推定されています。HCV感染例の約7割で感染が持続し、慢性肝炎へと移行します。慢性化した場合、ウイルスの自然排除は年率0.2%と稀であり、HCV感染による持続炎症に伴い肝の線維化が起こり、肝硬変や肝細胞癌へと進展します。現在本邦には約40万人の肝硬変患者がいると推定されていますが、その原因としてHCV感染が大多数を占めております。HCVに起因する肝硬変を由来とする肝細胞癌は国内での癌死因の第5位に位置しております。

C型肝炎ウィルスに起因する肝硬変について

肝硬変とは正常な肝臓の細胞が壊れて線維組織に置き換わり、肝臓が硬くなった状態をいいます。肝硬変は重症度により2つに分類され、肝臓の働きがある程度保たれている状態を「代償性肝硬変」、これがさらに進み肝臓の働きが失われると「非代償性肝硬変(重度の肝硬変)」になります。代償性肝硬変は臨床症状がほとんどありませんが、非代償性肝硬変にまで進展すると合併症による多様な症状(黄疸、腹水・浮腫、肝性脳症、食道・胃静脈瘤破裂による消化管出血など)が出現するようになり、生命に危険が及ぶこともあります。
現在、HCV感染患者さんに対して飲み薬による抗ウイルス治療(インターフェロンを用いない直接作用型抗ウイルス剤[direct acting antiviral; DAA]による治療)が積極的に行われています。本薬剤を用いたウイルス排除率は95%以上と高い治療効果を示しておりますが、非代償性肝硬変患者さんに限定してその結果をお話すると、ウイルスが排除できたとしても半数近くの患者さんにおいては肝臓の余力(肝臓の予備能力)の回復にまでは至らなかったと報告されています。これらの治療が無効あるいは行うことができない患者さんにおいては肝細胞癌や肝不全へと進行していく確率は高く、これらの患者さんに対して十分な対策を講じることが急務と考えます。
とは言え、非代償性肝硬変症に対する有効な治療法は肝移植以外未だ存在しません。

血管内皮前駆細胞(EPC)との出会い

血管医学研究の分野において(現:血管医学研究推進機構理事長である浅原孝之先生が1997年血管の幹細胞(血管内皮前駆細胞 [Endothelial Progenitor Cell=EPC])がヒト末梢血中のCD34陽性細胞として初めて同定、発見されましたが、EPCは血流障害を起こした臓器や組織に移植されると、血管を形成する細胞になる能力があることがわかりました。以後、EPC移植による血管再生治療に関する研究が進み、現在では重症下肢虚血、難治性骨折等患者さんに対する治験が進行中です。

久留米大学での取り組み〜基礎研究・臨床研究

我々の研究グループは、このEPC(CD34陽性細胞)を肝硬変患者さんの治療に用いることができないかと基礎研究および臨床研究を進めてきました。
基礎研究において、肝硬変症動物モデルに対しCD34陽性細胞を投与したところ、肝での線維化の程度が改善し、肝臓の再生が促進し、予後の改善まで認められることを明らかにしました。CD34陽性細胞の移植による肝臓再生の促進について、細胞自身が肝臓へ移動・接着し、血管内皮細胞に分化するという仕組みがわかりました。一方で、分化した細胞からは肝細胞増殖因子(HGF)など肝臓の再生にかかわる物質が分泌されるとともに、線維成分をつくりにくくするばかりでなく、線維成分の分解を促進させることも分かりました。これらの働きによって肝での線維化の程度が改善し、肝臓の再生が促進されるものと考えています。

肝臓の再生治療開始(非代償性肝硬変の患者さんを対象とした臨床研究の開始)

以上の基礎研究成果を踏まえて、2009年から「自家末梢血CD34陽性細胞移植による非代償性肝硬変患者に対する肝臓再生療法」を実施しました。10例の患者さん(C型肝硬変患者さん8例を含む)を対象に、G-CSFという薬剤を5日間皮下投与し、末梢の血液中に動員された単核球を体外循環装置で高効率に採取し、さらに磁気細胞分離装置(クリニマックス®)を用いて高純度のCD34陽性細胞を分離することで移植する細胞を得ました。得られたCD34陽性細胞は、足の付け根(鼡径部)よりカテーテルを挿入し肝動脈から肝臓内へ移植しました。全症例で治療後1年以内に亡くなった方はなく、肝細胞癌を含めた悪性腫瘍の発症も認められませんでした。また細胞治療前と比較し、肝血流量の増加、生活の質(QOL)の改善、中・高用量投与(移植)できた患者さんにおいては血清アルブミン値の有意な上昇を認めました。また参考データとして、肝臓の状態の指標(肝臓の予備能力=肝予備能)が増悪傾向を示すヒストリカルコントロール群(過去のデータを比較の対照とした群)に対し、細胞治療群ではその程度を遅らせる結果も認められ、肝硬変の病状進行を阻止し肝臓の予備能力の改善に有用であることが強く示唆されました。

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治療は多施設共同で実施
〜HCVに起因する非代償性肝硬変の患者さんを対象とした多施設共同臨床研究〜

現在、HCVが原因となる重度の肝硬変患者さん(HCVに起因する非代償性肝硬変の患者さん)を対象とした“自家末梢血CD34陽性細胞の肝動脈からの投与による肝臓再生治療を
全国4病院にて多施設共同臨床研究を実施しています。
①久留米大学病院
②兵庫医科大学病院
③関西医科大学付属病院
④湘南鎌倉総合病院

対象になる患者さん

対象となる患者さんは、 HCVに起因する非代償性肝硬変、年齢が20歳以上80歳以下、同意される前6ヶ月以内に他の治験または臨床研究に参加していない患者さんなどです。予定参加期間は、同意をいただいた日から登録後1年(52週)までとなります。

久留米大学病院 臨床研究センター 研究支援 再生医療等研究
https://www.kurume-u.ac.jp/site/aro/saiseiiryou.html

【お問い合わせ】
久留米大学病院(消化器内科)
電話:0942-31-7985
※問い合わせ時間:平日9:00~16:00

著者プロファイル

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中村徹(久留米大学医学部内科学講座消化器内科)

【略歴】
1997年:久留米大学医学部卒業
2001年:久留米大学大学院医学研究科卒業(医学博士取得)
2001年:久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門 助教
2001年:久留米大学先端がん治療研究センター肝癌部門兼務
2017年:久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門 講師

■主な所属学会、資格及び専門:
日本内科学会 内科指導医・認定内科医
日本消化器病学会 九州支部評議員・専門医
日本肝臓学会 指導医・専門医

■専門分野:肝硬変と肝再生