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NPO法人血管医学研究推進機構

これから始まる遺伝子治療〜HGF遺伝子治療薬の登場

大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学 寄附講座 教授
NPO法人 血管医学研究推進機構 理事
森下 竜一

近年高齢化に伴って増える閉塞性動脈硬化症やバージャー病など下肢重症虚血疾患に対する国内初の遺伝子治療薬が2019年3月、厚生労働省薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会で条件及び期限付製造販売承認が了承されました。

血管を新生して治す治療、いわゆる再生医療を目指したもので、これまでの療法や術式では治療や改善が困難な症例にも効果が期待でき、かつ患者さんに対して痛みも少ない低侵襲、そんな夢の治療が大きく前進実現します。

下肢重症虚血疾患とは、血管の閉塞(つまり)により下肢の筋肉に血液が適切に供給されず、下肢の血行が悪くなる病気で近年高齢化や糖尿病、慢性腎臓病の増加に伴って右肩上がりで増えています。
下肢の血行が悪くなると、安静時に痛みが出たり、進行すると治癒困難な皮膚潰瘍や感染症から壊疽になったりすることもあり、最悪の場合は下肢の部分的切断又は全切断が必要になります。

年間の発生率は、10万人に50人から100人といわれる中、下肢重症虚血疾患の患者さんの20%は、既存の療法に反応せず下肢切断を余儀なくされ生活の質QOLが著しく低下するといわれ、さらに膝下切断患者さんの場合、5年生存率が50%との報告もあります。
そんな疾患に対し、遺伝子を使って治療する再生医療が、いよいよ始まろうとしています。

HGFとは、肝臓の細胞を増やす因子として1984年に日本で発見されました。 最初は、肝臓の病気の治療薬として研究されていましたが、HGFの遺伝子を投与することで血管を新しく増やすということが1995年我々の研究チームにより発見されました。
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そして血管が詰まり血流が悪くなっている虚血部位に投与し「血管を新生する」というこれまでにない作用を有する治療としてさらなる研究、発展を遂げてゆきました。
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実はこのHGFは、近年様々な研究結果から適応対象疾患が広がりつつあります。
今後は様々な対象疾患に安全性が確認され、そして1日も早く患者さんに治療が行き届く様、生みの親として見守り続けたいと考えます。
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著者プロファイル

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森下 竜一

大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学 寄附講座 教授
NPO法人 血管医学研究推進機構 理事
大阪大学医学部卒業、米スタンフォード大学循環器科客員講師

平成15年より大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
平成21年よりNPO法人血管医学研究推進機構理事
内閣府規制改革推進会議委員・健康医療戦略本部 戦略参与
2025大阪・関西万博具体化検討会委員などを兼任