膠原病性難治性潰瘍の患者様へ向けた日常のフットケア

潰瘍の治療は外用薬を使う治療が中心となりますが、患者さん自身で行えるケアも重要となります。

皮膚の清潔

治りにくい傷には細菌の膜が張っており、その膜が傷の治りを悪くしている一因になることが分かっています。この細菌は傷の周辺の皮膚から侵入してくるため、傷の周囲を清潔にしておくことは重要です。清潔にする方法はとてもシンプルです。消毒を行う必要はありません。流水と石鹸で丁寧に洗うだけでいいのです。強く擦ったりせず、優しい力で丁寧に洗いましょう。その際に使用する石鹸は薬用石鹸ではない一般的なものを使うことを勧めます。薬用石鹸と言われている石鹸製剤は洗いあがりの皮膚の乾燥が強くなる傾向はありますので、できれば避けた方がいいでしょう。

皮膚の保湿

膠原病のある方はステロイド剤を服用している人も少なくないでしょう。ステロイド剤を服用していると皮膚が薄くなり、少しの刺激で傷ができることがあります。また、ステロイドを服用していなくても膠原病という病気は皮膚が弱くなることが多いです。皮膚は、清潔に保たれ、かつ適度な潤いを保つことで強くなります。きれいに洗った皮膚は保湿剤を塗布し、適度な潤いを保つようにしましょう。保湿剤は特に指定されたものはありませんので、市販されている好きないい匂いのする保湿剤で構いませんので、毎日の保湿を楽しく習慣化できるようにしてください。

むくみの管理

膠原病のある方は、病気の影響、筋力の低下などから足にむくみが出やすくなります。むくみは皮下脂肪に水が溜まった状態ですので、傷のある足がむくんでいると傷は水に浸かった状態と言えます。水に浸かった傷は治りにくいため、むくみを放置しておくことは傷の治りを悪くします。むくみは大きな歩幅で歩き、ふくらはぎの筋肉を動かすことや、足首を上下に動かす運動によって改善を認めます。毎日少しずつでも運動をしていきましょう。それでもむくみが強い場合は、医療機関に相談しむくみ用の弾性ストッキングを紹介してもらうといいでしょう。むくみ用の弾性ストッキングはドラッグストアで市販されているものがたくさんありますが、膠原病のある方は皮膚が弱いため医療用の弾性ストッキングを病院で選んでもらうことを勧めます。また、むくんだ足は乾燥しやすいので、しっかり保湿をしましょう。

皮膚の保護

乾燥やむくみなどがある皮膚はとてもデリケートで傷つきやすい状態です。軽く打撲しただけで内出血したり、少し引っ掻いただけで傷ができたりします。乾燥やむくみは皮膚を弱くする原因の一つですし、かゆみを誘発し傷を作りやすくします。放置せずむくみの改善と保湿ケアをしていきましょう。また、絆創膏やテープ、シップなどを用いる際には、剥がす時の刺激で皮膚が傷つくことがあります。皮膚に刺激の少ないテープ剤を選ぶことが重要ですが、剥がす前に少し水で湿らせるようにすると安全に剥がせます。

橘 優子 先生プロファイル

■著者 橘 優子 先生

■略歴
2007年 順天堂大学医学部附属順天堂医院入職
2008年 日本糖尿病療養指導士取得
2011年 糖尿尿病看護認定看護師取得
2018年 フットケア指導士取得
2019年 足の疾患センター開設にともないフットケア外来開設
2020年 足の疾患センター副センター長就任
リンパ浮腫セラピスト取得
弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター取得
フットケア・足病学会認定士取得 
現在に至る
■所属学会
日本フットケア・足病医学会(評議員)
日本糖尿病教育・看護学会
日本静脈学会
国際リンパ浮腫フレームワーク・ジャパン研究協議会
日本先進糖尿病治療・1型糖尿病治療研究会