足の傷が治らない時に気をつける病気〜PAD~
足の傷が治らない時に気をつける病気〜PAD~
准教授 藤井 美樹
順天堂大学医学部形成外科学講座
通常、傷は1ヶ月以内に治ります。足の傷が1か月しても治らない場合に気をつけなければならない病気の一つにPAD(末梢動脈疾患)があります。
下肢の血管は年齢と共に狭くなりますが、動脈硬化や糖尿病がある方、また透析をされている方ではより狭くなりやすいです。血管が狭くなることを狭窄、つまってしまうことを閉塞といい、四肢の動脈に狭窄や閉塞が起こる病気を末梢動脈疾患(PAD)と呼びます。下肢動脈の狭窄や閉塞が起こると、下肢に行く血液が足りなくなります。初めのうちは少し歩くとふくらはぎやお尻が痛くなります。これは間欠性跛行(かんけつせいはこう)といい、歩行により筋肉を使うことで血流が足りなくなることで生じますが、高齢や糖尿病などで感覚が弱くなっていると(末梢神経障害といいます)痛みに気づかず、進行してしまうことも多いです。もっと進むと、足は冷たくなり、じっとしていても痛くなります。平なところに仰向けに寝て、足をあげると足が白くなったり、足の甲や内くるぶしにある脈が触れなくなります。そしてケガやまき爪が食い込んでできた小さな傷がなかなか治らず、黒い壊死(えし)になります。悪化した場合は足趾や下肢の切断になってしまいます。
このような傷を治すには、まず下肢への血流を回復しなければなりません。バイパス術やカテーテルによる専門的な治療が必要です。PADがあるのに気づかずに黒くなったところを取ると、進行する可能性が高いです。チェックシートで当てはまる項目がある人は、まず主治医の先生に相談してください。例えば、先の述べた間欠性跛行は、腰部脊柱管狭窄症など他の病気でも起こりますので、医師による鑑別が必要です。PADの可能性が高ければ、専門的にPADの治療を行っている病院を紹介してもらいましょう。
著者プロファイル
■所属学会
日本形成外科学会・American Society of Plastic Surgeons Association of Diabetic Foot Surgeons (Executive board member)・
日本フットケア・足病医学会(評議員)・日本褥瘡学会(評議員)・日本創傷外科学会(評議員)他。
■研究
糖尿病性足潰瘍の骨髄炎発症メカニズム