日本における「血管再生治療」の紹介

日本における「血管再生治療」の紹介

血管医学研究推進機構
理事長 浅原 孝之

1)骨髄(単核球)細胞移植

血管再生細胞を含んでいる骨髄の細胞群を移植する治療で、医療費・医療技術の簡便性の点で優れた治療法です。現在では、下肢虚血性疾患・虚血性疾患に対して数施設で先進医療として治療を受けることが出来ます。

2)末梢血(単核球)細胞移植

血管再生細胞を含んでいる血液の細胞群を移植する治療で、医療費・医療技術の簡便性の点で優れた治療法です。現在では、下肢虚血性疾患に対して数施設で先進医療として治療が進められています。
さらにGSCF というお薬で血管再生細胞の数を増やして末梢血液を採取して治療する臨床研究も、数施設で治療が進められています。

3)血管細胞(EPC)移植

血管再生細胞(CD34 あるいはCD133 マーカー陽性の細胞)だけを集めて移植する治療を進めています。医療費・医療技術の簡便性では劣りますが、治療効果の高さでは、世界の中でも注目を集めています。神戸の先端医療センターを中心に治療が進められてきましたが、現在は治験が実施されようとしています。

4)培養末梢血(単核球)細胞移植

血管再生細胞を増やすための細胞培養法を末梢血液細胞に応用したもので、質の高い細胞を簡便に利用して治療出来る点で注目されています。培養技術は東海大学で開発され、難治性潰瘍の患者さんに対して順天堂大学形成外科で臨床研究が始まっています。

5)血管新生遺伝子治療

血管を再生するメカニズムを応用した遺伝子治療が日本で開発されました。大阪大学の森下教授の技術を応用して、血管新生因子の遺伝子製剤を用いた血管再生治療です。現在は下肢虚血性疾患に対して大阪大学を中心に6 つの施設で先進医療として治療が実施されようとしています。

6)間葉系細胞移植

骨髄あるいは他の組織から採取できる間葉系(幹)細胞による移植治療です。
血管新生誘導作用を利用した治療方法で、自分から採取する場合と、他人の細胞を利用した製品の場合とあります。現在は自家間葉系細胞治療の臨床研究が数施設で進められています。

夢の治療と言われた再生治療が、日進月歩の速さで現実的になってきています。
医療を受けられる日もそう遠くない未来、じきにやってくるでしょう。

著者プロファイル

dr.nakamura1984年:東京医科大学医学部卒業
1999年:東京医科大学医学部博士課程修了
2002年:東海大学医学部 基盤診療学系 再生医療科学 教授
2003年:先端医療センター 再生医療研究部 部長
2005年:先端医療センター 血管再生研究グループグループリーダー
■主な研究分野:
血管再生治療、血管新生、VEGF の血管新生に対する作用、Angiopoietin-1,-2 の血管新生に対する作用、Ephrin,Eph の血管新生に対する作用、糖尿病と血管新生、老化と血管新生、高脂血症と血管新生