再生医療ってどんな病気が治せるの
第3回のマナビラボでは、再生医療がこれまでに治療が難しかった病気やケガの治療が可能となる「新しい医療」として期待されていることを、下肢重症虚血疾患を例に学びました。今回は、再生医療でほかにどのような病気が治せるかについて学びましょう。
再生医療ではこんな病気が治る!
右図に再生医療の対象となる代表的な疾患を挙げています。ここに挙げているものは一部ですが、みなさんが思っていたよりも幅広い疾患が対象となっているのではないでしょうか?
再生医療の中にはすでに厚生労働省に認可された治療もあれば、自由診療(自費診療)で行われる治療、そしてまだ開発段階の治療もあります。それぞれについて、どのような治療があるか見ていきましょう。
厚生労働省に認可された再生医療
通常の医療と同じように、再生医療にも厚生労働省の認可を受けて保険適用となっている治療があります。このような厚生労働省の認可を受けた治療に使われる細胞製品や遺伝子製品を「再生医療等製品」と呼びます。この認可制度は2014年に始まり、2020年7月現在、次の表の9品目が再生医療等製品として認可されています。この中で「コラテジェン」は『夢の治療最前線〜血管再生医療について』でも紹介したように、本機構理事の森下竜一先生が開発した再生医療等製品で、慢性動脈閉塞症による潰瘍を治療する再生医療として注目されています。
臨床試験中の再生医療
現在、大学病院や製薬企業によって、様々な疾患を対象に少なくとも50以上の再生医療の治験・臨床試験が日本国内で行われています。その中には、脳梗塞のような注目度の高い疾患を対象とした治療や、山中教授のノーベル賞受賞で有名になったiPS細胞を使った治療があります。また、現在世界中で大きな問題となっているCOVID-19を対象とした臨床試験も計画されています。
これらはまだ開発段階ですが、近い将来認可され、より多くの病気が再生医療によって治療できることが期待されています。
その中から、代表例として血管疾患の治療に関する治験・臨床試験を下の表に挙げます。
自由診療としての再生医療
一方で、再生医療の中には、保険の適用外ですが自由診療(自費診療)として受けることができる治療もあります。再生医療の自由診療は、医師の責任で自由に行えるというわけではなく、治療を行う際には「認定再生医療等委員会」という専門家による委員会の承認を受ける必要があります。
どのような再生医療が自由診療として受けることができるかを含め、詳しくは次回のマナビラボで説明いたします。
今月の学び
心臓、血管、脊髄、角膜などの幅広い病気を対象とした再生医療が、厚生労働省の認可を受けて保険適用治療として行われています。また、現在50以上の治験・臨床試験が進められていて、近い将来、より多くの病気が再生医療によって治療できることが期待されています。
【監修】
大阪大学大学院 医学系研究科
健康発達医学寄附講座 教授
NPO法人 血管医学研究推進機構 理事
中神 啓徳 先生