【夏休み特別企画】未来へつながる医療のお話:再⽣医療について学ぼう!

イモじろう

今回は夏休み特別企画です。けんたろう先生、未来の研究者のみんなに向けて、再生医療について教えてください!

けんたろう先生

わかりました。では、今回は再生医療について学びましょう。難しく考えず楽しんで読んでくださいね。

再生医療とは?

そもそも再生医療とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称:『薬機法』)という法律の中で、下のように定められています。

一 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの
イ 人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成
ロ 人又は動物の疾病の治療又は予防
二 人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの
(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」より)

なんだか難しくてよく分かりませんね。
簡単に言うと、細胞や遺伝子をお薬として利用し、病気を治療する医療ということを指します。

お薬と言えばやはり飲み薬やぬり薬、注射を想像しますが、細胞を薬として利用する治療とは、いったいどういう医療なのでしょうか?

私たちの体はたくさんの細胞からできている!

みなさんご存知のとおり、私たちの体はたくさんの細胞からできています。いったいどれくらいの細胞があると思いますか?
最新の研究では、私たちの体は270種類もの細胞が37兆個ほど集結してできていると言われています。これら多くの細胞たちが、それぞれの働きをすることで、私たちは物を見たり、食べたり、歩いたり、考えたりといった活動をすることができます。

また、さまざまな原因から働かなくなったり失われてしまった細胞も存在しますが、それが「病気」や「ケガ」へとつながります。病気やケガになった時、例えば骨折してもしばらくたつと骨がつながりやがて元に戻るように、私たちの身体は自然に治癒する力を持ち備えています。この時、体の中では、失われた細胞を補うために幹細胞と呼ばれる細胞が新たな細胞を生み出したり、骨折の場合であれば骨芽細胞という骨の成分を作る細胞が新たな骨を作り出すなど、様々な細胞の働きにより、体は回復してゆきます。

「細胞」の力で病気やケガを治す!

ただし、どんな病気やケガでも自然に治癒するわけではありません。例えば大やけどのように体の修復が追い付かないほどの大きなダメージを受けてしまった場合や、歳を取ることで細胞の働きが衰えてしまい修復できない場合、また生まれつき一部の細胞が正常に働かない病気もあります。

こういった病気やケガに対して、これまでの医療は、症状を抑えることしかできず、体を修復するまでには至りませんでした。

そこで、失われたり働きが衰えてしまった細胞の代わりとなる、元気で新しい細胞を補充することで体の修復を目指す新しい治療法「再生医療」の研究が進みました。

日本では再生医療と呼ばれますが、このように細胞を利用することから、海外では「細胞治療」(“cell therapy”)と呼ばれることも多いです。 例えば骨の病気では、生まれつき骨の一部がない病気に対して、骨芽細胞を移植することで欠損している骨を作り出す治療法の研究が進められています。

再生医療の歴史は、細胞を探究することから始まりました。

細胞が失われているのだったら、それを補充すればよいのでは?とごく簡単に考えがちですが、その治療法がこれまで行われなかったのには、理由があります。 治療に使うための細胞を体の外で増やす(「培養」と言います)ことが難しかったからです。

現在、細胞を培養することはそれほど難しいことではありませんが、細胞培養の方法が発明されるまでには長い研究の歴史が存在します。培養の研究が始まったのは今から約160年も前の1860年代で、カエルの心臓を取り出して体の外でも心臓が拍動することに成功したことが始まりです。その後、動物の組織や細胞を使って、培養液の改良、雑菌の繁殖を防ぐ方法などの研究が積み重ねられ、ヒトの細胞の培養に成功したのは1950年代になってからです。ただしこの時も培養できた細胞は治療に使えるようなものではなく、治療に使える細胞の培養にはさらなる研究が必要でした。

世界初の再生医療!

今から40年以上前、アメリカのハーバード大学医学部のグリーン教授はヒトの皮膚細胞の培養の研究を行い、皮膚の細胞を培養で増やすだけでなく、その細胞からシートを作る技術を発明しました。そして1981年、大やけどを負った患者さんに対してその皮膚シートを移植する手術を行い、成功したことが発表されました。これが世界で最初に行われた再生医療です。この手術を行ったグリーン教授は「再生医療の父」と呼ばれていますが、この皮膚シートの再生医療はやがて日本にも導入され、今では厚生労働省に認可された治療法としてやけどの治療として行われています。

再生医療の研究は「細胞」から始まる!

夢の治療は実現化しつつありますが、研究の成果は、未知の細胞や新しい培養方法を探すこと、つまり日々の地道な研究から始まります。

例えば「血管の再生医療」は、1997年に当機構理事の浅原先生が血管の幹細胞を発見したことから始まりました。浅原先生はその血管の幹細胞の培養方法も見つけ出し、細胞を大量に得ることができるようになりました。その後、当機構協力医師の田中先生が臨床試験へと進め、細胞の発見から約25年経った今、厚生労働省への承認申請まであと一歩の段階まで進んでいます。

今月の学び

イモじろう

新しい再生医療のためには地道な「細胞」の研究が重要なんだね!

けんたろう先生

そうです。再生医療の研究はこれからもっともっと進んでいきますし、これを読んでくれたみなさんに少しでも医学研究に興味を持ってもらえると嬉しいです。